ティールームのメニューや、茶葉の販売店で「セイロンティー」という紅茶を目にしたことがあるかと思います。
ただ、ダージリンやアッサムが「インド国内の紅茶生産地の名称」という明確な定義があるのに対して、セイロンティーは幅広い意味で使われていることが多いです。
そのため、セイロンティーの意味を漠然としたイメージで認識している方も多いのではないでしょうか。
ここではセイロンティーの定義とその種類、特徴、歴史などを紹介しています。
目次
- セイロンティーとは?
- セイロンティーの特徴とは?
- 主なセイロンティーの種類とは?
- セイロンティーの歴史とは?
- セイロンティーが優れているといわれている理由とは?
- まとめ
セイロンティーとは?
セイロンティーを生産する国、スリランカとは?
スリランカは、インドの南東に位置する島国です。
北海道の8割程度の面積で、国土は狭いですが、南部を中心に主要な紅茶の産地が7カ所あります。
中央に山岳地帯があり、山岳地帯に沿って標高約2,000mから低地まで、約700の茶園が点在しています。狭い範囲に茶畑が集中しているにも関わらず、標高差が大きいため、多彩な特徴を持つ紅茶が生産されています。
セイロンティーとはスリランカ産紅茶の総称
セイロンティーは、スリランカ産紅茶の総称で、
日本で生産された茶を「日本茶」と呼ぶのと同じです。
「セイロン」はスリランカの旧国名で、1972年に現地語で「光り輝く島」を意味する「スリランカ」に国名が変更になりました。
しかしその前から、スリランカの紅茶は「セイロンティー」という名前で、世界に広く流通していたため、国名が変更されてからも、スリランカの紅茶は「セイロンティー」と呼ばれています。
セイロンティーの特徴とは?
スリランカでは、年間を通して茶摘みと紅茶の生産が行われ、世界トップクラスの紅茶生産量を誇ります。同時に、世界有数の紅茶輸出国でもあります。
日本も、スリランカから一番多く紅茶を輸入しています。そのため、日本での一般的な紅茶のイメージは、セイロンティーの風味である場合が多いです。
季節風の影響で雨季と乾季があり、乾季は「クオリティーシーズン」と呼ばれ、特に品質の高い紅茶が生産されています。
各産地の紅茶には、それぞれ特徴がありますが、全般としてセイロンティーは、水色・味・香りのバランスがとれているのが特徴です。
標高別でいくつもの生産地がある
スリランカには、国土の中央に山岳地帯があり、一番高いところでは標高が約2,000mにもなります。
赤道に近い国ですが、標高の高い地域では気温が上がらず、年間を通して、日本の春先のような気候が続きます。
それに対して低地では、年間を通して約30℃の気温が続きます。
紅茶は、茶の樹が育つ環境や気候で、その風味が左右されるため、生産地の標高差がダイレクトに紅茶の風味にも影響を与えます。
そのためスリランカでは、7つの生産地を標高により3つに大別しています。
ハイグロウンティー
標高1,200m以上の地域で生産された紅茶を、ハイグロウンティー(High grown tea)と呼んでいます。
昼夜の気温差が大きく、霧が出ることも多いです。
それが、紅茶の繊細な香りを作り出すのに、大きな役割を担っています。
明るい褐色の茶葉と、花のような繊細な香りと心地よい渋み、オレンジがかった紅茶の水色が特徴です。 日本に一番多く輸入されているセイロンティーが、ハイグロウンティーです。
ミディアムグロウンティー
標高600~1,200mの地域で生産された紅茶を、ミディアムグロウンティー(Medium grown tea)と呼んでいます。
比較的穏やかな気候の地域です。
茶葉はやや暗めの褐色で、抽出すると鮮やかな赤い水色の紅茶になります。
芳醇な香りと、まろやかでコクのある風味が特徴です。
強いクセがなくバランスのとれた味わいのため、飲みやすく、アイスティーやフレーバーティーのベースにもよく使われています。
ローグロウンティー
標高600m以下の低地で生産された紅茶が、ローグロウンティー(Low grown tea)です。
スリランカ国内の紅茶生産量の半分以上を、ローグロウンティーが占めています。
黒っぽい茶葉の色で、抽出すると濃い赤みのある水色の紅茶になります。
どっしりとした濃厚な味わいと甘みが特徴で、スモーキーな香りがします。
きれいによれた茶葉は世界で高く評価されており、特に中東の国々で人気があります。
世界でトップクラスの紅茶の品質
セイロンティーは、世界でもトップクラスの品質を誇っています。
スリランカでは、茶葉は新芽と若葉のみが手摘みで収穫され、製茶は伝統的な製法に則って行われています。
このように、茶の栽培から製茶に至る全ての工程を、厳しい基準で管理することで、紅茶の品質を維持しています。
それが、世界からの高い評価につながっています。
また紅茶工場内では「5S」と呼ばれる「整理・整頓・清掃・清潔・しつけ」を守って、衛生面の管理も徹底され「世界で最も清潔な茶葉」と認定されています。
主なセイロンティーの種類とは?
セイロンティーの主要な産地は7ヵ所ありますが、その中でも特に有名な産地5ヵ所を紹介します。
狭い範囲に茶園が集中していながら大きな標高差による気温や環境の違い、雨季と乾季の違いなどでそれぞれの産地の紅茶の特徴は大きく異なります。
その特徴による違いは、風味や紅茶の水色だけでなく、それが好まれる世界の地域にまで及び、その多様性に驚かされることでしょう。
一般的に標高が高い産地の紅茶ほど紅茶の水色が薄く、繊細な香りと渋みを持ち合わせています。
ヌワラエリヤ
標高約1,800mのところに茶園があり、スリランカの中で一番標高が高い生産地です。
昼夜の気温差が大きく、霧がよく発生します。
このような環境が、繊細な紅茶の香りを生み出し「セイロンティーのシャンパン」とも称されています。
程よい渋みと、明るいオレンジ色の水色が特徴で、クオリティーシーズンの1~3月に生産された茶葉は、これらの特徴が際立ちます。
ストレートで飲むと、その特徴をよく味わえます。
ディンブラ
山岳の西側、標高約1,200mのところに茶園が位置しています。
すっきりとした飲み口と華やかな香り、鮮やかなルビー色の水色が特徴です。
強いクセがなく、味と香りのバランスが良いため、オーソドックスな紅茶として誰にでも飲みやすい紅茶です。
また、ストレートでもミルクティーでも美味しく飲むことができます。
乾季の1~2月に生産される茶葉はバラのような香りが特徴で、日本で人気があります。
ウバ
山岳の南東部標高約1,800mに位置する産地です。
清涼感のあるメントール系の香りは「ウバフレーバー」とも呼ばれ、特にクオリティーシーズンの7~8月に生産された茶葉は、この香りが際立ちます。
力強い風味も特徴で、ストレートやミルクティーで飲むのがおすすめです。
カップに注いだ際、カップに沿ってオレンジ色に縁取りされる「ゴールデンリング」も見られます。
ダージリン・キームンとともに、世界三大銘茶の一つととされています。
キャンディ
標高約600mのところに位置する生産地で、セイロンティー発祥の地です。
紅茶は明るい赤色の水色で、穏やかな渋みとコク、まろやかさのバランスが良く、ほんのりと甘い香りを感じられます。
ストレートでもミルクティーでも飲みやすいです。
強いクセがないため、ブレンドティーやフレーバーティー、アレンジティーにも重宝されています。
また、紅茶が白く濁るクリームダウンを起こしにくく、アイスティーにもよく使われています。
オールマイティーな紅茶と言えるでしょう。
ルフナ
スリランカの南部、標高が300m前後の地域に位置する生産地です。
スリランカで一番標高が低い生産地で、高温多湿な地域です。
そのため、栽培される茶葉は、他の産地の茶葉よりも大きくなります。
紅茶は力強さが特徴で、濃い赤茶色の水色をしています。
濃厚な味わいでコクや甘みがあり、穏やかな飲み口で、スモーキーな香りも特徴的です。
ミルクティーに砂糖を加えると、ルフナの特徴がわかりやすいです。
セイロンティーの歴史とは?
世界で高く評価され、人気が高いセイロンティーですが、その歴史は約150年前に遡ります。
当時イギリスの植民地であったインドで、紅茶の生産が成功を収めていました。
そして、紅茶の生産量を増やすため、同じくイギリスの植民地であったスリランカが新たな生産地として選ばれました。
スリランカの気候が茶の栽培に適していたこともあり、一気に茶栽培の規模が拡大しました。
同時にその品質の良さも、世界で評判となりました。
品質の高さは、現在のセイロンティーにも引き継がれています。
19世紀の半ばにスリランカ(当時のセイロン)で紅茶の栽培が始まった
今でこそ紅茶で有名なスリランカですが、19世紀半ばまではコーヒーの栽培が盛んに行われていました。
ところが1860年代後半にコーヒーがサビ病で大きな打撃を受け、それに代わる産業として、紅茶が生産されるようになりました。
最初の商業茶園は、スコットランド人のジェームス・テイラーが茶栽培を始めたキャンディのルーラコンデラ茶園です。
ジェームス・テイラーはそれ以降、紅茶生産の試行錯誤を繰り返し、スリランカの紅茶産業の成功に大きく貢献したため「セイロンティーの父」と呼ばれています。
ほぼすべての大手紅茶ブランドに使われ世界中に広がる
スリランカには政府が運営する紅茶局が設立されています。
紅茶局は、純正セイロンティーの証明となるライオンのロゴを全世界で商標登録したり、セイロンティーの地理的表示認証を取得して、品質を保証すると同時に、偽造品も防いでいます。
また、生産される紅茶の多様性のおかげで、セイロンティーは世界の人々の多岐にわたるニーズに対応できています。
ニーズに合うことと品質への信頼から、現在ではほぼ全ての紅茶ブランドが、セイロンティーを原料にした商品を世界で販売し、世界中でセイロンティーが飲まれています。
セイロンティーが優れているといわれている理由とは?
セイロンティーは、年間を通して安定して生産できることに加え、そのバリエーションの豊かさも魅力です。
また、品質や安定した供給以外にも、セイロンティーが評価されているのが、環境にも配慮して、茶葉が生産されていることです。
これは、第三機関からも認められています。そして、消費者が茶葉を購入する際にもわかるように、パッケージに認定された証であるロゴが表示されています。
基準を突破した茶葉のみがライオンのロゴがついたセイロンティーとして販売されている
紅茶産業は、スリランカの基幹産業の一つのため、国を挙げて紅茶産業の維持に努めています。
その一つが、セイロンティーの品質を保証することです。
紅茶局が、スリランカで生産された全ての茶葉の品質をチェックしています。
そして、厳しい水準を満たしたスリランカ産の茶葉のみで作られ、スリランカ国内で包装された、生粋のスリランカ産の茶葉には、ライオンのロゴが付けられています。
ライオンのロゴは、紅茶局が品質を認めた証であり、パッケージに表示されています。
まとめ
一言で「セイロンティー」と言っても、その特徴は産地によりさまざまで、いろいろな風味の紅茶を味わうことができます。
セイロンティーの定義とその特徴を知れば、紅茶選びも一層楽しくなるでしょう。
また、品質の良さを知った上でセイロンティーを飲めば、自分もその取り組みの一端を担っていると思えます。
セイロンティーの特徴を知りより一層セイロンティーの世界を楽しんでください。