紅茶は緑茶や烏龍(ウーロン)茶と同じ茶の樹の葉から作られており、発酵具合によって烏龍茶や紅茶へと変わります。
発酵といえば、細菌を使ったものをイメージされる方も多いですが、紅茶は酸化発酵という普通の発酵とは少し違う過程によって出来上がります。 紅茶がどのように発酵し、どのくらい発酵をするのか気になるという方もおられるのではないでしょうか。
こちらの記事では、紅茶の発酵とは何か、発酵の効果とともにご紹介いたします。
目次
- 発酵とその種類とは?紅茶は何発酵?
- 紅茶の発酵時間や紅茶を発酵させる効果とは?
- 紅茶の発酵の歴史とは?
- まとめ
発酵とその種類とは?紅茶は何発酵?
発酵と聞いて、皆さんはどんなものを想像しますか? 身近な発酵食品といえば、納豆や味噌、チーズなどを想像される方が多のではないでしょうか。 前述の通り、紅茶も茶葉を発酵させて作られています。 しかし、発酵には種類があり、紅茶の発酵と一般的な発酵食品では発酵の仕方に違いがあります。 そもそも発酵とは何かという疑問をお持ちの方もおられると思いますので、詳しくご紹介します。
発酵と腐敗の違いとは?
発酵と腐敗は同じものだと思われている方は多いのではないでしょうか。 実は、発酵と腐敗は紙一重といわれており、人間の視点で決めたものに過ぎません。 この二つの大きな違いは、人間にとって有益であるか有害であるかです。 人間にとって有益な物質が作られる現象が発酵であり、反対に人間にとって有害な物質を作る現象が腐敗となります。 日本人には馴染み深い納豆は発酵食品ですが、海外の方にとっては腐った豆という認識になります。 そのため、発酵と腐敗の線引きは非常に曖昧なものといわれています。
発酵と熟成の違いとは?
発酵と腐敗に同じく、熟成という言葉も発酵に近い言葉のように思っている方もおられるのではないでしょうか。 食品を一定期間寝かせ、風味や質を向上させることを熟成といいます。 最も分かりやすい例が、チーズになります。 チーズは生乳に乳酸菌や酵素を加えて発酵させることで作られますが、熟成によって様々な種類のチーズを生み出すことができます。 しかし、温度や湿度の管理には十分気をつける必要があり、管理が不十分だった場合、腐敗につながる可能性もあります。
主な発酵の種類
発酵食品といえば、納豆や味噌のようなものが一般的であるため、そのようなものを想像される方が多いと思います。 しかし先述の通り、発酵と一口にいっても、種類がいくつかあり食品によって異なります。 また、紅茶は他の発酵食品とは全く異なる発酵の仕方をします。 それでは、発酵の種類にどのようなものがあるのか、発酵について詳しくご紹介いたします。
微生物による発酵
発酵において最も一般的なものが、微生物による発酵です。しかし、すべての微生物が食品を発酵させるわけではありません。 発酵食品を作ってくれる微生物は、大きく「カビ」「酵母」「細菌」の三つに分けることができます。 発酵に使われる細菌の中でも代表的なものが味噌や醤油を作る元となる麹菌やパンを作る元となる酵母菌、チーズやヨーグルトの元になる乳酸菌、納豆菌、食酢を作る元になる酢酸菌の5つです。
アルコール発酵
アルコール発酵は、簡単に言うとお酒を作る過程として知られています。 例えばワインの場合、ブドウジュースの中で酵母が糖分に働きかけてアルコールと炭酸ガスに変化させることを指します。 ブドウジュースに比べてワインにブドウ本来の甘みが少ないのは糖分がアルコールに変化しているからです。 そのため、ブドウの糖分によって、アルコール度数が変わります。 また、ビールや日本酒の場合には、糖分ではなく酵素によってでんぷん質が糖分に変わることによって発酵します。
酸化発酵
紅茶の発酵は酸化発酵というもので作られています。 この発酵には微生物は関与せず、茶葉自身が持っている酸化酵素の働きによって行われます。 茶葉にはカテキンという苦味成分が含まれていますが、このカテキンが酸化によってタンニンへと変化します。 タンニンは渋み成分のため、緑茶は苦味が強いものであるのに対して、紅茶は渋みの強いものになります。 水色は緑色から赤褐色へと変化し、紅茶の芳香を放つようになります。酸化発酵のイメージは、切ったリンゴの断面が変色していく現象と同じといわれています。
紅茶の発酵時間や紅茶を発酵させる効果とは?
紅茶が酸化発酵によって発酵することを紹介しました。 紅茶は、最も発酵時間を有するお茶のため完全発酵茶とも呼ばれています。 同じ茶葉からどのくらい発酵すると紅茶やウーロン茶と差が生まれるのか疑問に思われる方もいると思います。 具体的に紅茶を作る場合に必要な発酵時間について以下で紹介します。
紅茶の発酵時間はどれくらい?
紅茶の発酵時間は約2~4時間といわれています。 しかし、お茶の鮮度や柔らかさ、気温、湿度などによって発酵時間は異なります。 一般的には、室温30度且つ湿度90%の環境下で発酵が行われます。 この過程によって、緑色だった茶葉は赤褐色に変化し、紅茶特有の芳香を放つようになります。 この発酵時間によって紅茶の出来に差が大きく生まれます。
発酵時間によって紅茶にどのような差がうまれる?
前述の通り、お茶の鮮度やその日の気温や湿度で発酵時間は異なってきます。 そのため、酸化発酵は、2~4時間の目安をもとに紅茶の香りや色で判断し、酸化発酵を止める必要があります。 しかし、12時間も発酵していたケースもあるため最適な発酵時間の見極めは難しいです。 また、発酵時間が長くなってしまうと、紅茶の芳香が台無しになってしまい、また水色も黒っぽく変化します。
紅茶を発酵させる効果とは?
紅茶へと発酵させる過程でポリフェノールのひとつであるテアフラビンが生成されます。 テアフラビンによって芳香な紅茶の香りと赤褐色の水色をもたらしてくれます。 紅茶の品質に重要な成分ですが、わずかしか含まれない希少価値の高い成分でもあります。
緑茶やウーロン茶と紅茶の違いとは?
お茶は不発酵茶、半発酵茶、発酵茶に分類されます。 このうち、緑茶は不発酵茶、ウーロン茶は半発酵茶に該当します。 発酵具合によってお茶の種類が変わるため、発酵を適切に止める必要があります。 酸化発酵を止める手段は、多くの場合釜で炒る方法が使われていますが、蒸気で蒸して酸化発酵を止める製法もあります。 発酵が進むにつれ、色は緑色から褐色に変化し、さらに渋味とコク、香りが増します。
紅茶の発酵の歴史とは?茶葉が発酵したのは偶然?
紅茶の誕生には諸説があります。 そのうちの1つに、イギリスに向かっている航海中に運んでいた緑茶が船内で発酵をし、偶然紅茶が誕生したというものがあります。 しかし、すでに蒸して釜炒りした後に乾燥させられた緑茶には酸化酵素がないことから、今となっては否定されている通説となっております。
ヨーロッパで人気のあった半発酵茶の特徴を強くした?
紅茶は、ヨーロッパの人々の好みに合わせて開発されたものであると考えられています。 ヨーロッパに初めて入ってきたお茶は元々中国茶であり、中国同様それは薬のような役割を持っていました。 諸説はありますが、ボヘアティーやウーロン茶などの半発酵茶がイギリスに輸入されると、緑茶よりそちらの方がイギリス人に好まれたそうです。 そこから、嗜好に合わせて発酵を進めていった結果、現在の紅茶が出来上がったとされています。
まとめ
いかがでしたでしょうか。 発酵といえば納豆のようなものをイメージしてしまうので、紅茶が発酵されて作られているのは意外でしたよね。 紅茶は発酵させることで紅茶特有の水色と芳香を放つことになります。 そして発酵によってお茶は様々な可能性に溢れているともいえます。 ぜひ、紅茶と一緒に緑茶やウーロン茶を飲み比べてみて、発酵具合の違いを楽しんでみてはいかがでしょうか。